『楽しいクリスマス』

 

 

アプリリウス1宙港には、いつも大勢の人が行き交っている。
年の瀬ともなれば、それは当然輪をかけて多くなってくる。

 

*

 

「シン、こっちだ。勝手に歩くと迷うぞ」
「迷わないねっ」

いーだっ、と、利かん気の強い表情で応える子わんこの姿は慌ただしく行き来する人々の目に、一時の清涼剤として微笑ましく映る。

子わんこの二匹連れ。
つい、保護者を探してしまいそうになるが、こと、このアプリリウス1宙港ではこの二匹に関してはそれはない。超有名人だからだ。
もしかしたら、地元のマティウスに帰れば、本当に迷子になっていたとしてもお家に帰れてしまうくらい有名人だ。
ただし、使用する宙港は軍港兼務に限られるかも知れないが。

「レイはー? 一緒にクリスマスするんだよな」
「連れて帰ってくれと云われているからな。クリスマスはこちらで過ごして、新年にはオーブに行く。こら、隊長はまだこちらで仕事があるんだ。他所に行くな」
「行かないよぅっ。アスランさん待ってるのに、隊長も一緒に帰ればいいのにっ」
「―――そうだな」

クリスマスだろーと、年末だろーと、新年だろーと、国防総監のお仕事は年中無休に近い。一応、定期的に入れてはいるものの、予定通りにいった試しはない。

『そもそも、ピンクの妖精様が横ヤリを入れることもあるしな』

レイとしては同情を禁じ得ないが、勿論、その横ヤリはお仕事上のもので、決して無理矢理ではないはずなのだが、時々計算したのかと勘ぐりたくなるのは気の所為だろうか?
何はともあれ、小さいお友達を連れて無事マティウスのジュール邸に帰ることが今のレイの至上命題なのである。
そんな風に歩いていた二匹の前を、同じような二匹連れが横切ったのは単なる偶然である。

「あーっ」
「あ……」

シンが大きな叫び声をあげて、ぱたぱたと走り寄る。声に反応したのかその内の一匹がこちらを振り返って、やはり少しだけ控えめな声をあげた。

「カズ君だーっ」
「シン……とレイ?」

ホテッと首を傾げて尋ねるその子わんこは、特別高度救助隊(SR)・特別隊員の一騎だ。
彼らと並んで歩いていた一団がそのまま足を止める。

「どうした、一騎。―――おー、ジュール隊の。いつ見ても元気いいなー、豆坊主」
「豆坊主じゃないっ。シンだっ!」

大柄なシェパード種の隊員がポンポンとシンの頭を叩く。
以前、このSR隊とジュール隊が合同演習した関係で、彼らもシンを知っている。
どちらの隊員もよもや第一線で働くパートナータイプがいるとは思っていなかった事から、それ以降、友好的な関係を築いていた。
同じ犬種を元としている事やパートナータイプであることを差し引いても、シンと一騎はよく似ている。今の二匹を見分けるには制服の違いくらいしかないだろう。

「今からSRは移動ですか?」
「あぁいや、一回出動があって、それの報告かねてアプリリウスに寄港したんだ。一週間ほどアプリリウスだな。坊主たちは今から帰りか?」
「はい、マティウスまで」
「そうか、気をつけて帰れよ」

レイが徳永隊長から手際よく状況を聞き出していると、シンは一騎と何やらお話の真っ最中。

「シン」

そろそろ行くぞ、と、云おうとしたレイをほったらかして、シンは一騎とお話だ。

「アスランさんがね、クリスマスの用意して待ってるんだ。カズ君のお家は?」
「―――えっ…と…」

どうしようと一騎の視線が彷徨う。

前に合同訓練した時にそういえばシンはご主人様がいるって云ってたな。お目々がきらきらしてる。いいな、と、ちょっとだけうらやましく思う。
でも、ご主人様がいなくても、アルヴィスに帰れば仲間がいる。

そう思って一騎が応えようとした時、隣から声がした。

「我々はクリスマスは仕事だ」
「総士っ」
「クリスマスに出動の機会は多い。我々SRはそれに備えなくてはならない。特に主のいないコーディネイタードッグ(CD)は優先で残ることになる」

SRのCDは主に軍属だ。
シンやレイも表向きは軍属だが、飼い主が登録されている。というか、ジュール隊のCDやコーディネイターキャット(CC)はそういう意味でもエリートが多い。ヨウワンやヴィーニャにしても飼い主がいて、祭日ごとの休みはきちんと与えられている。
だが、一般に軍属のCD・CCはZAFTそのものに登録されいるものの方が多い。
そういったモノたちは与えられた宿舎と任務地の往復となることも少なくない。ワーカー型とはいえ、彼らが一人で自由に歩ける所は未だ少ない。
SRの彼らにはマイウス6にアルヴィスという宿舎が与えられている。

「―――クリスマス…しないのか?」
「しない」

きっぱりと応える。
それよりも皆の生活をまもるという使命を大切にしなくてはならない。それが自分たちがここに在る意味だと総士は考えている。

しょんぼりしてしまったシンを前に、困ってしまった一騎に救いの手を差し伸べたのもやっぱり隊長だった。

「坊主、家でクリスマスするのか?」
「うんv」
「そうか、それはいいな」
「隊長がケーキ作ってくれてね、お肉とかごはんとか―――プレゼントとかっ」
「そうか―――良かったな」

わしわしと頭を大きな手で撫でられる。そして、やがて大きな大きな身体がひょいっとシンを同じ目線まで抱き上げた。

「なぁ、坊主、一つ、俺からお願いがあるんだ」
「いいよ、何?」
「一騎と総士を坊主の家に招待してもらえないか?」
「うんっ、いいよっ」

その台詞に驚いたのはSRの二匹の方だ。

「隊長っ」
「それはいけません、隊長っ」

抗議が二匹から上がるがそれは意にも留めず、下で自分を見上げているレイに「ダメか?」と確認をする。

「―――判りました。隊長に―――ジュール総監に了解を得ます。まず、断ることはないと思いますので、そちらのシフトチェンジをお願いします」

レイから承諾を貰うと、頷いてシンを下ろす。小さな二匹が戸惑った表情で自分たちの隊長を見上げる。

「隊長、我々は……」
「総士と一騎が今まで頑張ってくれているのを俺たちは知ってるからな。まぁ、急に決まったが俺たちからのクリスマスプレゼントだとでも思ってくれ」

異存はないな、と他の隊員を振り返っても、そんなもの出るわけもない。
にこにこと笑っている他隊員と、困惑している当事者たちを当分に見ながら、レイは大きく大きくため息を吐いて、急遽変更となった予定をイザークに伝えるための通信機を取り出した。

 

*

 

「まったくっ、何考えてるんだ、イザークの奴っ。仕事上のゲストを連れてシンとレイが先に帰るから、出迎えの準備をしておけって。仕事のゲストのエスコートを子供にさせるなんてどういうつもりなんだ、あいつはっ!!」

クッションを………どう考えても力任せに叩きながら、アスランはゲストルームの用意をしていた。

イザークから「急遽、仕事のゲストをクリスマスに招くことになった。アプリリウスでの俺の仕事がもう少ししたら終わるが、先にレイとシンにゲストを連れて帰るように指示している。貴様はゲストルームを一部屋用意しておけ。ゲストは二名だ」という連絡が入ったのは、今から4時間ほど前だ。
アプリリウスからマティウスまで、約4時間かかる。
宙港からの移動を考えても、もうそろそろ着くことも考えられる。
食事はとりあえず普段の物を出すことにして、ゲストルームの用意は終わった。

「迎えに行った方がいいのかな?」

小首を傾げて一人呟いた時、セキュリティシステムが小さく反応した。
シンとレイではエアカーが運転できないから、エアタクシーを頼んでいる。おそらく、レイの持っているセキュリティ解除キーが反応したのだろう。
二階にあるゲストルームからパタパタと駆け下り、とりあえず姿見で失礼のない程度に身繕いをしたアスランが一呼吸置いて、玄関のドアを開いた。

「ようこそ、いらっしゃいま………」

すいーと、真正面をみたアスランの視界には誰もいない。エントランスから少し離れた向こう側にエアタクシーの運転手と会話をしているレイが見える。

「―――レイ、ゲストは?」

呼びかけに振り返ったレイがいささか困惑。
そのアスランの足下で何やらぴょこぴょこ。

「アースーラーンさぁんっ」
「あぁ、シン、ちょっと待……―――ってぇぇぇえええぇぇぇぇぇ―――――っ!!!」

ぴょこぴょこ飛び跳ねるシンに「少しだけ待ってくれ」とにっこり笑って見下ろしたとき、アスランは目を疑った。

「アスランさぁんっ」
「こんにちは、お邪魔します」

二匹並んで見上げてくるそれは。
大きなお目々と黒い髪。
くるんと丸まったしっぽ。

 

「―――っシンが、シンが、分裂した―――っ!!!」

 

うわー、と、叫んで、二匹同時に抱き上げる<ちなみに推定15s×2。

「シン、大丈夫なのか? 何があったんだっ! 何があってこんな嬉しいことにっ! いや、そーじゃなくて、―――一体、どーしたんだっ!! イザークの奴、何も云わなかったぞっ!!!」
「―――元隊長、落ち着いて下さい」
「これが落ち着いていられるかっ!!」

はぁ、と、大きく息を吐くレイ。
そうか、あの頃はまだまともだったんだな、なんてミネルバの頃を思い出してみたり。最近ではすっかり隊長が甘やかす物だから少しの事でもぎゃあぎゃあ云うパニック体質を謳歌している観がある。

「アスランさんーっ。カズ君だよ。連れて来いってゆったから連れて来たのにーっ」

抱き上げた片方からコーギー―――じゃない抗議の声。

「へ?」
「お友達のカズ君」

やっとまともに視線の合ったアスランとシン。
それを確認して嬉しそーににぱーっと笑うと、隣にいる同じ顔とうんうん二匹で頷いて。

「――――お友達の……」
「カズ君とソウ君」

そう改めて云われて、アスランの翠の眸がやっとレイの隣に並ぶ、これまた同じような容姿のCDに向かう。

「あ……と?」
「失礼します。L4空域N区特別高度救助隊所属、皆城総士です」
「同じく真壁一騎です」

片一方は綺麗に敬礼して。
片一方は抱っこされてるから、あんまり格好良くは出来なかったけど、嬉しそうな笑顔を向けられて、アスランはポカンとしていた表情を改めて、「ようこそ、いらっしゃい」と最初の挨拶に戻ったのだった。

 

***

 

「第一、イザークが最初に云ってくれてれば何て事はなかったんだ」

笑劇のご挨拶タイムが終わって二時間程経ってからイザークが帰宅すると、そこはもう素晴らしく子わんこ仕様にいろいろなものが散らばったリビングと化していた。

 

「意外に早かったな」
「―――ゲストを呼んでおいて、ホストが帰れんでは本末転倒だろう」
「シンのゲストだろ」
「クリスマスのゲストだ」

料理や酒肴でもてなすのが礼儀というものだろう、と、帰る途中で急いで仕入れたらしい品の数々と一緒にキッチンへとイザークが消える。

本来、片付けるはずだった仕事はまだ1/3程残っている。それらを全てディアッカに丸投げしてきたというのが実情だ。

元々シンが国防総監宅の子わんこだというのは知っているし、イザークに会ったこともあるのだけれど、その時は制服で厳しい表情のままだったし、いろいろ噂だけ聞いてるしちょびっとだけ怖いな、なんて思っていた一騎なのだが、制服でなく藍色のざっくりとしたセーターにジーンズというラフな格好で帰ってきて、シンとぎゃんぎゃん言い合っている姿を見ているウチにだんだんと緊張も解けてきたらしい。
今はシンと絵を描いている。

「上手だな、一騎」
「そーだねっ、うまいねっ」

確かに一騎の描く絵はシンと同じクレヨンを使っているとは思えないくらい整っている。ただ、それだけちょっとダイナミックさには欠けるかも知れないが、それはそれだ。

「ありがとうございます」と小さく呟いた一騎は、一緒に来ている同僚をチラリと垣間見た。
ソファーの上で行儀良く座ってる総士はまだどこか緊張が抜けていない。
あれが総士の素なのだと自分は判っているし、総士がそういった表現を苦手としていることも知っているけれど、折角、招いてくれた国防総監やシンに悪いじゃないか、とも、思う。

そんな二匹を見ていたレイがスッと立ち上がった。

「総士、すまないが、少し手伝ってくれないか?」
「? 何をだ」
「ゲストを使って悪いとは思うが、どうやら手持ちぶさたのようだし、何かしている方が気が紛れるだろう。隊長がキッチンでクリスマスディナーを製作中なのだが、お一人では手が足りないことも多い。私も行くので皿の用意など手伝ってくれないか?」
「判った」

確かにそうだろうと思う。
何より気まずくこの場にいるより、何かしていた方がいいことは事実だ。

「レイ、そんなことなら俺が行くのに」
「元隊長はシンと一騎をお願いします。ではこちらだ、総士」

あっさりとアスランの提案を退けて、総士を連れてリビングからキッチンへと移動する。
それを見て、一騎がほう、と息を吐いた。

 

***

 

大きな大きなケーキ。
大きなツリーに小さなゲスト。
二人が描いた絵もちゃんと一番良いところに飾り付けましたよ。
たくさんのごちそう。
今年のジュール邸のクリスマスはいつにもまして賑やかです。

 

「明日はマティウスの動物博物館に行くんだよ」

折角ですからね、楽しまなくちゃ。

 

外側がカリカリで、中がジューシーな丸焼きは、わざわざ取り寄せた本物の七面鳥です。

「本当に美味しいです。これは………干しぶどう? あぁ、中の詰め物にドライフルーツが入っているんですね。これ、ユニウス産の棗なんですか? プラント産のドライフルーツメインなんですね」

『アレ』からもうどれだけ経ったのでしょう?
ユニウス7が跡形もなくなって、それでも農業プラントとしてユニウスは再生をとげ、いくつもの作物が安定供給出来るまでになっていった。
そして、それを後押ししているのが、第一線を退いたとはいえ、プラントで絶大な影響力を持つエザリア・ジュールであることは知られた話だ。

そして。

「あぁ、じゃあ、このホールケーキにデコレイトしているフルーツもそうなんですね。すごく美味しそうです」

ベリー類をメインに色取り取りのフルーツとチョコでトッピングされたケーキは渾身の作品だ。
下のスポンジには砕いたナッツが入って、ホイップクリームも絶妙な甘さと柔らかさです。

「だからケーキは後だと云ってるだろう、小僧っ、聴いているのか!!」

わぁい、いつものことですね。

 

他にも本当にたくさんのごちそうです。

小さい子わんこが一生懸命飾り付けたツリーがそれらを見守っています。
飾ったモールの所々に子わんこの毛玉がついているのはご愛敬です。
絡まっちゃったんですね。

でも。

 

そんな楽しい光景を見ながら、ふっと総士の目が遠くを見るように泳ぎます。
こんなことしている場合じゃないのに。もしかしたら、出動がかかってるかも知れないのに。

 

ふいに。

 

ポンッと大きな手が総士の頭に乗せられました。
パッと反射的に立ち上がった総士に、手の持ち主・イザークは「座れ」と告げます。

「何を考えていたかはだいたい判る。責任感があるのはいいことだ。―――特に俺たちのような仕事をしている者たちに責任感がなくなったら終わりだ」

だ、けれど。

「それに伴って、息抜きをすることを覚えるのも仕事のウチだ」
「ですが、本来、我々は他の人々が息抜きをする余裕を作るために創られました」

人手不足を補うための労働力として。

 

「だが、機械ではない」

 

何故、ロボットにしなかったのか。
何故、人としての倫理を問われるような行為に及んだのか。

「機械ではなく、互いにコミュニケーションを取り、パートナーとして支え合うためにCD・CCは誕生した。決して使い捨ての道具ではない」

まぁ、小僧のように息抜きなんだか、仕事なんだか、遊びなんだか、良く判っていない奴もいるが、それは参考にするな、と、息を漏らしつつ、イザークはカーテンを開けた。
完全空調管理されたプラントで雪が降るのは年間通して数回だ。
その中にあって、このイブの日にだけは必ず雪が降る。神など信じていないはずのプラントで。

「作り物だが、それでもこの日を楽しみにする者は多かろう」

それは人間であれ、CD・CCも変わりはしない。

「隊長ー」
「なんだ?」
「明日、カズ君と雪合戦していいー、レイとソウ君もー」

何故、そこで自分も混ざってしまうのだろう??と思いながら、否定するのも面倒なので黙して語らず。

「―――――動物博物館に行くんじゃなかったのか、小僧」
「それも行くよー」

どこにどれだけそんな時間があるのやら。
子供の時間管理は摩訶不思議だ。

それでも。

「雪合戦って?」
「雪を丸めてね、エイッてぶつけるんだ」
「へー、楽しそう」

うんうん頷き合う小さな二匹。

 

この二匹の上に良き夜が降り注ぎますように。

 

 

***

 

雪合戦して、ドロドロの洋服を着替えさせて(お泊まりセットなんてなくても大丈夫! 着替えはたくさんあるからね)そっくりほとんど同じで見分けの付かない二匹と、これまた巻き添えで汚れちゃった二匹も綺麗にしてあげて、動物博物館に行ったよ。

急に来たから二匹にはプレゼントがなかったはずなのに、ゲストルームで寝てた二人の枕元にも朝起きたらちゃんとプレゼントがあってびっくり。
ありがとうございますってアスランに告げたら、「何のことだ?」って返されたけど、イザークが苦笑と共に「サンタからのプレゼントだろう? 気にせず貰っておけ」と云ったから、多分、『国防総監』殿のいたずらかも知れないけどね。

 

 

楽しい時間はあっとゆー間に過ぎちゃって、もう夕方にはシャトルが出ちゃいます。

「本当にありがとうございました」
「ありがとうございます、楽しかったです」

宙港まで見送りに来て、案の定、シンは「帰っちゃヤダー」ってワンワン泣くし、
アスランまでが「帰らなくていいのに」とぶつくさ云っている。

「気をつけて帰れよ。アプリリウス宙港に着いたら、念のため連絡をいれておけ」
「はい、判りました」

それじゃあ、と手を振ってゲートに入ろうとしたカズ君を「あっ」とアスランが呼び止めた。

「はい?」
「そうだ、良いこと考えた。カズ君もソウ君も、ウチの子になればいいんだ」
「―――――は?」

がしっと手を掴まれて、キラキラした眸で二匹を当分に見ている綺麗な人は、まったくもって良いことをなんで今まで思いつかなかったのかと、悔しがっている。

「貴様っ、一体、何を考えているっ!!!!」
「だって、そうじゃないか。こんなにシンと似ているカズ君が赤の他人のはずないよ。多分、シンとは兄弟なんだ。だったら兄弟揃ってウチの子になっておかしくないだろうっ」

いや、アスランだって本気でそう思って――――いるんだろうな、この場合。

はぁ、と、ため息を吐いて、イザークはポカリとアスランの頭を叩くと、ぎゃあぎゃあ云っているのを尻目に

「こいつのことは気にするな。だが、いつでも遊びに来い。あんな家だが、大歓迎するぞ」

一騎と総士、当分に握手してゲートへと促す。
少し大きくて、あぁ、MSパイロットの手なんだ、と、妙に整った顔からは想像の出来ない感触の手に感動する。

「はい、また、遊びに来ます」

シンのお友達として。
そして、国防総監のお友達として。
ぎゅうって抱っこしてくれた『アスランさん』やレイに会いに。

 

小さな小さな姿がゲートの向こうに消えちゃっても、シンとアスランはしばらくそこでずっと二匹の行った先を見つめていました。

 

二人の乗ったシャトルはもうすぐ出発です。
楽しい思い出をいっぱい詰めたトランクと一緒に。

 

 

[FIN] 20101227up